ご挨拶
目の前の病人に医療を行うのは医師ですが、その背後には過去の医学知識と医療技術の膨大な成果があります。その成果のなかで医用工学がもたらしたものは少なくありません。当研究部は、医学部の中で医用工学を研究しています。
さて、「医工連携」は近年良く聞かれる語句ですが、その真の意味での実現は容易ではありません。最高の工学技術が医療に緊密に連携して展開される必要があります。本研究部はその実現が可能な、日本でも数少ない場であります。
本研究部では、化学・高分子化学、材料化学を基盤技術として、疾患部位にどのようなメカニズムで、どのくらい疾患部位に選択的に薬物や造影剤が送達されるかという、ターゲティングの研究をしています。このターゲティングのためのキャリアとして主に合成高分子を用いています。
ターゲティングでは、合成高分子キャリアが生体の免疫システムにどのように認識されるかが重要になります。以前のターゲティング研究では、細胞傷害性の抗がん剤を用いることが多く、そのため免疫系も傷害されるので、(合成高分子に限らずに)キャリアに対する免疫作用は問題にされませんでした。
一方、慢性疾患に対して繰り返し行う薬物治療においては、キャリアに対する免疫作用が働くと大きな問題となります。
当研究部では、免疫システムがキャリアと薬物を認識して免役誘導するために重要な働きをする部位を化学的に設計することにより、この免役作用を制御できることを発見しました。この発見は、工学(化学)と医学が緊密に連携した当研究部の場でこそ成されたものと考えられます。
このような研究を通して、当研究部は未来のより良き画像診断(ターゲティングされた造影剤による)と薬物治療(ターゲティング薬剤による)を創造することに貢献します。
概 要
医用エンジニアリング研究部は、昭和47年(1972年)に吉村正蔵教授(第四内科教授との兼務)によって医用エンジニアリング研究室として開設されました。その後、岡村哲夫教授、高津光洋教授、古幡博教授と室長が受け継がれ、平成22年から横山昌幸教授が第五代室長となり、平成26年度からは医用エンジニアリング研究部となりました。
医療に用いられる次世代の工学技術を研究しており、現在はナノサイズのデバイスを用いたターゲティング画像診断、脳梗塞・固形がんの薬物治療を主として研究している。
スタッフ
モットー
准教授 白石 貢一
研究背景にあるのは化け学、化学です。中学校で一番好きな科目は、もちろん体育。次に技術、で美術。5教科?何それ?的で、一番嫌いな科目は理科でした。なぜなら、意味が分からなかったから。なぜ化学を選んだのか?よく覚えていません。ただ、高校の授業のときに、窓際の席で液体と液体を混ぜると、6,6-ナイロン(高分子)ができあがったときのことは、なぜか、今でもよく覚えています。
化け学のモノヅクリという観点は、有機化学における電子雲のつながりで出来上がるしっかりした分子同士の結びつき(共有結合)です。それがつながると光ったり、電気が流れたりします(大学院時代)。つながった電子雲からなる結合の曖昧さを学んだのはラジカルです。ラジカルは電子が余っているんです。余るって何?(ポスドク時代)。余っている電子って使い道がないようである、それは磁石で、医学的には磁気共鳴画像(MRI)につながりますね、とっても使い道がありました(常勤研究員時代)
さらに、曖昧さが増して生体分子は、非共有結合と呼ばれるしっかりしない分子の結びつきが重要な部分を占めています。しっかりした分子の結びつきに比べて、しっかりしない分子の結びつきの力は1/100以下です。そんなしっかりしていないのにどうして働くの?それは周りのサポートがあるからのようです(常勤研究員時代)。しっかりとして結びつきを示さない分子でも、周囲のサポートによって、実は、しっかり働き、個につながるのが我々、生命体と思います。その中で働く免疫という現象は、生命現象の一つの現象です。この免疫という現象を理解しようと思い、化け学の手法をもって捉えようとして一握りの事実を掴んだと思うと、次から次へとなぜ?が現れ、その魅力に気づき、ゴールがありません。ただ、少しずつですが、点と点がつながっていくように思います。免疫はウイットに富むようで、対する私はユーモアをもってこの魅力的なテーマを捉えて表現したいと思っています(現在)。
趣味嗜好のこだわりが強すぎる(多分)。一般的に書けば、音楽鑑賞、映画鑑賞、ジョギング
好きな場所:雰囲気がある所(建物、町など)で出張の際の町散策。印象に残ったのはLeie川沿いの夜の街並みとZuidwest kanaal沿いの夜の街並み、月曜早朝のNeudeのウサギの佇まい。
Past and current research aim
Post-doctral fellow Debabrata Maiti
My past research was focused on the design of inorganic based nano-biomaterials for multimodal imaging guided cancer therapy. From my former research study, I have been observed the initiative role of chemistry to design a biomolecule and the responsibility to make a bridge between the biomolecules and biological segments like living cells via physical/chemical interaction. On such interesting observation I believe that the finding of a specific physical phenomenon of such interaction is still attracting. Currently, I am focusing on the interaction between polyethylene glycol (PEG) conjugated poly-amino acids (PEG-poly amino acids) and anti-PEG-antibodies (anti-PEG-Abs). By taking advantage of some specific physical properties of such biomolecules like, amino acids, our aim is to find the key factors which are responsible for the physical association/dissociation of PEG-poly amino acids with/from anti-PEG-antibodies. We expect that this study will disclose the way to establish the cause of proximity of biomolecules and anti-PEG-Abs via weak interaction so called “material symbiosis”.